ONE CUP · 一杯の値段
一杯を、ほどく。
カフェで買うコーヒーの値段は、何でできているのか。豆を育てた人には、どれだけ届くのか。そして、なぜ今、動いているのか。いつもの一杯を、ひとつの製品のように分解してみる。
生成画像(イメージ)
朝のカウンターで差し出される、白いカップ。そこに注がれているのは、ほとんどが湯だ。それでも一杯には、赤道に近い畑から港、焙煎所、店の家賃と人の時間まで、長い旅の値段が折りたたまれている。
30秒要約
- ドリップの一杯は、重さのほとんどが水で、豆は150mLあたり約8グラム。そして、家庭用の袋の分解(2021年ドイツ)でも、大手チェーンの決算でも、値段の大半は豆そのもの以外の段階で生まれている。
- 2021年のドイツの家庭用コーヒーでは、小売値のうち栽培の段階の価値は約2割だった。ただし費用を引いた農家の純収入は、1kgあたり0.41ユーロという推計である。
- 国際価格は2025年2月、月平均で名目の記録を更新した。天候と収穫、在庫、物流、関税、取引所の証拠金など、理由はひとつではない。
- 世界では飲む量が20年で約4割増え、伸びの中心はアジアと産地。国際機関は、4年続いた不足が余剰に変わると見ているが、天気と在庫が値段を支えている。
- 読み終えると、自分の一杯のどこにお金が流れているのか、これからの動きを何で読めばいいのかを、数字の出どころと限界とともに読めるようになる。
01 · 計量
一杯は、ほぼ湯でできている。
カップの中で、溶けたコーヒーの成分が占めるのは100分の1ちょっと。残りは湯だ。
ドリップの規格の目安。エスプレッソは別。
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一杯は、ほとんど水でできている。
1秒で豆は、ひとつまみ。残りは、湯と時間。
米国スペシャルティコーヒー協会(当時SCAA)の「ゴールデンカップ」規格は、ドリップコーヒーの目安を、湯1リットルに豆55グラム(±10%)、豆に当たる湯を93℃前後と定めている[1]。150mLの一杯に当てはめると、豆はおよそ8グラムになる(55g/L×0.15L、規格からの計算)。
その8グラムも、すべてが溶けるわけではない。規格がよいとする抽出率は18〜22%。挽いた豆の約2割だけが湯に移り、残りの約8割はフィルターの上に残る。できあがった液体のうち、溶けたコーヒーの成分は1.15〜1.35%にすぎない[1]。
この規格はドリップのためのもので、エスプレッソは別の考え方で淹れる。
02 · 分解図
値札は、ほぼ4等分。
畑も、焙煎所も、店も、そして税も。袋のコーヒーの値段は、ほぼ同じ重さで分け合われている。
2021年ドイツの家庭用コーヒー。カフェの一杯ではない。
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値段は、層でできている。
1秒で畑、船、焙煎所、店、税。一枚の値札の下には、何枚もの紙が重なっている。
まず正直に書いておく。国をまたいで同じ基準で「店の一杯」を分解した原価表は、この取材では見つからなかった。そこで、いちばん細かい分解がある「袋のコーヒー」から始める。
2021年のドイツで、スーパーなどで売られた家庭用コーヒー41製品を加重平均すると、小売価格は1kgあたり9.71ユーロだった(付加価値税とドイツのコーヒー税を含む)[3]。その価値は、小売、焙煎、コーヒー税、栽培という4つの段階に、それぞれ21〜23%ずつ、ほぼ均等に分かれていた。国際輸送と、産地での集荷・輸出を合わせて6.8%。付加価値税が6.5%[3]。
PASSPORT · THE STORY CONTINUES
価格の波から先は、
世界市場の奥へ。
ここからは、国際価格、気候と供給、世界の需要、これからの見通し、そして企業と金融へのつながりを読みます。
- 03–04価格の波と、気候で動く生産地図
- 05–07世界の需給、需要地域、次に見る5つの計器
- 08値上がりが企業と資金繰りへ届くまで